学部学科トピックス
【新コース講義紹介】「認知症予防につながる科学的に立証された食生活について」
杉本 八郎 学長
2026年4月に新コースが誕生します。本学の教員が、どのような講義を行い、研究者としてどのような研究をしているのかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は杉本八郎学長です。
健康科学部 健康栄養学科 フードサイエンスコース 杉本 八郎 学長
◆講義名
認知症と食
◆研究テーマ
食生活の研究を通して
認知症にならない生活を
めざします

【動画】
Q 講義内容について教えてください
日本は世界で最も長寿な国になりました。これは食生活の改善や医療技術の進歩、さらにすぐれた医薬品の開発などによって得られた成果です。
しかし長寿になったことを素直に喜べないこともあります。それは一般的に言われる平均寿命と健康寿命には差があるということです。
この差を病気を抱えて生きていくことに本当の幸せはあるでしょうか。
そして高齢になった時に遭遇する疾患の主なものが認知症です。認知症の原因は多岐に渡っていますが、最も大きく影響するものが食事にあります。
毎日の食事の取り方で認知症になりやすい人と認知症になりにくい人に分かれます。
講義の中で食事について何が認知症によいのか、科学的に研究された食事のありかたを講義します。皆さんの周りに認知症で苦しんでいる方も多くいる事と思います。
その認知症の患者さんを助けるために大いに力になる、認知症予防に繋がる科学的に立証された食生活について、みなさんと考えていきたいと思います。
Q その研究を始めたきっかけを教えてください
随分前の話になりますが、私があるとき母の家を訪問したとき、母が私に向かって「あんたさん誰ですか?」と言ったときのショックは大きかったです。
私は母親っ子で、母はとても私を大切にしてくれました。家が貧しいときに母と一緒に千葉県までお米を買いに行ったり、荒川で取れた蜆を一緒に売りに行ったりと、母と一緒に苦労していた時に、将来自分が絶対母を幸せにすると誓ったものでした。
その最愛の母が認知症になったのです。その当時は世界に認知症の薬はありませんでした。
私はエーザイという薬の会社の研究室で研究をしていたので「よし、それなら自分で認知症の薬を開発しよう」と強く心に決めました。
そして苦節15年かかって、世界で初めてのアルツハイマー病(認知症)の薬「アリセプト」の開発に成功したのです。アリセプトは薬のノーベル賞と言われる英国ガリアン賞特別賞を受賞しました。そのため私は今でもノーベル賞の候補に挙げられます。
今は、認知症の予防につながる食について研究をしています。



◆高校生へメッセージをお願いします
学生生活は長いようで短いものです。青春は大変貴重な時でもあります。
大学での4年間の中で自分が心から感動できるものを探してください。その感動がみなさんの将来の目標を作ってくれます。
目標を持った生き方がいかに大切であるか、それは人生の時間を有意義に過ごすことができるからです。
人生はたくさんの方に支えられています。そのことから人生の目標のなかに「世の為、人の為」になることをする。それは世界を明るくし、自分自身も楽しい人生を送ることができます。
そして目標実現のために「一歩前へ出る勇気」を持って生きてください。
プロフィール
健康科学部 健康栄養学科 フードサイエンスコース 杉本 八郎 学長
都立化学工業高校を卒業後、エーザイの研究所に研究補助員として入社。
会社で仕事をしながら大学は中央大学の理工学部工業化学の夜間部で化学を学ぶ。
エーザイの筑波研究所でアルツハイマー病治療薬アリセプトの開発に成功。
一時期人事部に異動になり、その間英語の論文を5報書いて広島大学で博士号を取得。
1996年アトランタでアリセプトの新発売大会が開催され、2500名の前で発表。その成功によりエーザイ創薬第一研究所所長に就任。
2003年3月にエーザイは定年になり、4月より京都大学薬学研究科創薬神経科学講座の教授に就任。
その間、京都大学発のベンチャー「グリーン・テック社」を立ち上げアルツハイマー病治療薬の研究を継続。
その後、同志社大学生命医科学研究科客員教授として勤務。
趣味は俳句と剣道(教士7段)。